2011/12/11

「前略プロフを知っていますか」

この文章は、2006年11月7日、mixiに投稿したものです。

楽天は前略プロフから撤退とのこと。
まるで何もなかったかのように過去に埋もれていくのかな、
と感慨を覚えつつ、再アップします。
文章は当時のままです。

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既にご存じの方にはごめんなさい。

もしご存じなくて、特に小中高校生の親御さんでお子さんが携帯をお持ちだったら、続きをぜひお読みください。

「ブログ」がらみの事件や問題がたくさん報道されていますが「うちの子はパソコンやってないから関係ない」とお思いではありませんか?

お子さんに「お友だちでプロフっていうの作ってる人いる?」と聞いてみてください。構えず、さりげなく言う自信がなかったらやめましょう。今後、警戒されるかもしれません。

ブログとプロフ、どっちが普及しているのかわからないけど、中高生の間ではここ数年急速にプロフが伸びているようです。PCなら「プロフ 携帯」でGoogle検索してみてください。できれば携帯のインターネット機能で「プロフを検索してみてください。


※携帯からの利用は通信料がかかります!! それをご承知の上でお願いします。


かなり最初の方に「前略プロフ」というのが出てくると思います。中高生の掲示板で「プロフ作りました。番号は……」と書いてあったら、ここかも。流れに乗れば、簡単にプロフが作れます。無料です。auやドコモなどキャリアの公式ホームページサービスとは異なり、携帯の暗証番号を登録する必要もありません。つまり、「通信料が高くなったわね」以外、まったく親に怪しまれることなく作ることができるのです。

プロフ」はもちろん「プロフィール」の略です。「ブログ」や「ホームページ」を作るには、なんらかの動機が必要です。何かを発信したい、表現したい、という動機。それをクリアした人が手を出す。だから一歩踏み出さない人の方が多い。

ところが、プロフィールを書くだけなら動機なんかいらない。PCのネットでも昔からプロフィールや100の質問系はありましたが、ここ数年「バトン」のおかげでこの手のものが加速しているかも。「前略プロフプロフを作るのは実に簡単です。ニックネーム、性別、血液型、星座などを入力。あとは登録した携帯メールに届いたURLから管理人室へ。

そこでは「ゲスブ」(もしくは「ゲス」)を作ることができます。最初に管理人室に入ると、ひときわ大きな文字で「ゲストブックを作る」が出てきます。「ゲスブ」はゲストブック(掲示板)の略なんですね。「プロフ」と「ゲスブ」を作ったら、「プロフ」のURLを友だちに送ります。もちろん携帯で
OK。友だちはプロフにアクセスし、ゲスブにカキコ(書き込み)したりします。

でも、自分もプロフを持っていないとハブにされる場合もあります。「プロフもなぃ人のカキコとか基本シカトだから」みたいな発言、宣言をけっこう見ます。「タメ(同学年)です!絡もー!(カキコやレスしあおう)」とカキコしてもシカトされる。「プロフ(は)?」と冷たくあしらわれるだけマシ。だからますます「プロフ」を作る子供が増える。

「ゲスブ」にはランダムにランキング業者が書き込みに来る。「ランキングに参加しませんか!」「あなたのプロフ画像がこのサイトのトップ画像になります!」とか書いてありますけど、そんな引きがなくても「たくさんの人と絡みたい」と思えば登録するわけで。このランキング業者、いくつかあるけどほとんどつながってるんじゃないだろうか。だってAに行くとBの宣伝が、Cに行くとAの宣伝が、Bに行くとCの宣伝が……と芋づる式。ちなみにこの手のランキングサイト、PCでも見ることができますが、異様なスピードでリロードしてる。気持ち悪いです。気持ち悪いどころか、このページを開くと、戻るアイコンを押しても前のページに戻れません。ああ気持ち悪い。携帯からこういうページにアクセスすると、何が起きるんだろう?
そもそもこれは、リロードしてるだけ? 何か情報抜いたりしてない?
とんと無知なので勝手な推測ですが、とにかく気持ち悪い。

前略プロフの検索に適当な言葉を入力してもいろいろなプロフを見ることができますが、このランキングページからもプロフに飛ぶことができます。小学生(!)中学生、高校生、ヴィジュアル系、萌え系……様々なジャンルに分かれています。ためしに中学生のランキングを見てみたら、「登校拒否です」「死にたい」「ゥチも死にたいことょくぁる」なんて書き込みのあるゲスブを持つプロフが上位に来てたりする。子供たち、手軽にこういう話をする場所がほしかったんだね……。悪い方向に転がらなきゃいいんだけど。悪い大人に利用されたり(涙)。

「登録する方へ。リンクタグつけないと順位上がらないよ」とか、とにかく子供が(子供に限らないけど)登録したくなる、登録しなくちゃと焦る要素てんこもり。さらに「アダルトなサイトはダメ!こっちにとんでいって!」とアダルト系の情報はありませんよ、って顔をして、そこをクリックすればアダルトページのランキングへ一直線。ああー……。

そうそう、小学生のランキングには、小学生ジャンルをクリックしたくなる悪い男の人向けのプロフがたくさんありました。ていうかほとんどそうだった。いきなり着メロサイトに飛ぶのなんてかわいい方。エッチ系山盛り。おー、この女の子、携帯までさらしてるよ!「ヒマできたらワン切りするからかけてぇ」だってさ。業者ですね、これは。ろくでもない業者ばっかりだな。でも、マジの小学生がこんな所にうっかり登録しちゃったらどうなるんだろう……(怖)。だいたい、小学生のふりしてこんなプロフを作っていいのだろうか?

CGIBOY運用規則より(※CGIBOYについては後述します)

第5条 禁止行為等
◆当社は、ユーザーに対し、第4条により禁止または制限される行為のほか、下記行為を禁止します。
(中略)
・偽装画像等を設ける行為
(中略)
・本サービス登録時に、虚偽の届出をする行為

第6条 是正措置
◆当社は、コンテンツの内容またはユーザーの行為が、第4条及び第5条により禁止または制限されるものに該当すると判断した場合には、当該ユーザーに対し、当該コンテンツ公開の停止その他の是正措置を要請することができ、ユーザーは、すみやかにその要請に従うものとします。
◆前項にかかわらず、当社は、コンテンツの内容またはユーザーの行為が、第4条及び第5条により禁止または制限されるものに該当すると判断した場合には、予告なく、当該コンテンツの削除または当該ホームページの閉鎖をするとともに、以後、当該ユーザーの本サービスの利用を停止することができます。

あれれ? 禁止事項なんだから即刻削除すべきなんじゃないかしら、こういう業者? あっ「することができます」か! する義務はないんだ(爆)!

あ、楽天です、これやってるの。「前略プロフのページには何も書いてませんが、登録作業をやっていくとわかります。

子供を対象に(明らかに)していながら、広告は出会い系やら金融系やらがぞろぞろ。

でも、文句は言えません。

CGIBOY運用規則より

◆ユーザーは、対象ウェブサイトに弊社所定の広告が所定の位置に掲載されることにつき、異議なく同意します。
うわ、同意してたんだ。知らなかった。だいたい読まないでしょう、こんな長い運用規約。今回PCからだから読んだけど、携帯からアクセスした人の何%がこんなもの読みますか?
読みませんよね。

さて、できあがった「前略プロフ」に戻ってよく見ると、右下に「CGIBOY」と書いてあるのでクリックしてみます。

おおー、無料cgiサイトだ。「前略プロフもここのパーツのひとつなんですね。携帯でもパソコンでも掲示板が作れるし、日記サイトも作れるらしい。日記コーナーに進むと、日記のススメから他人の日記を読めるらしい。読んでみましょう。

ふむ。なるほど。どう考えても仕込みの業者らしい「日記」もありますね。そのリンクから、いろんなところに飛んでいける。まあ「前略プロフ」にもリンク機能があって、そこに登録されたところからどんどん飛んでいけるわけですが。

さて、携帯コミュニケーションを利用しているのは子供だけではありません。で、「日記のススメ」には「大人の日記」という項目があります。進んでみましょう。「18歳以上ですか?」と聞かれるので「はい」をクリックします。子供でもいけるような気がする。ていうか、プロフも日記も何も登録していなくても見ることはできますから。……あちゃー(汗)。こんなに簡単に読めちゃうわけですね、こんな「日記」を。もちろん本気で「あたしのこういう話読んで!」って人もいるでしょうけど、こちらも業者がいますねー。リンクをクリックさせようとしてるのが見え見え。そこから先はどこにつながっているのでしょうか……。でも文句は言えません。

CGIBOY運用規則より

当社およびパートナー企業は、CGIBOYにおける利用者の皆様の投稿等についての責任を負いません。また、当社およびパートナー企業は、CGIBOYに違法または不当な記載がないか否かを監視し、そのような記載を削除する義務を負いません。
明言してた。やっぱり義務はないんだって。

さて、再び「CGIBOY」に戻ります。「アルバム」も作れるらしい。日記もそうですが、前略プロフにリンクさせることができます。※追記・アルバムはPC用のCGIBOYサイトからしか作れませんでした。すみません。

おいおいおい……なんだこれ。こんなに素顔さらしていいのかっ! 同級生の写真まで載せるなー! そもそも「前略プロフ」のトップ画像も素顔炸裂ですが……。

思うに、彼らのかなりの部分は、携帯からしかこの世界を見ていないので「URLを教えた友だちしかここを見られない」と勘違いしているのではないでしょうか?
もちろん、積極的に「たくさんの人に見てほしい」人たちもいるでしょうが、それはそれで大変まずい。危険きわまりない。






長文、読んでくださってありがとうございました。上に書いたページ、すべて、PCから検索して見ることができます。プロフ、日記、ゲスブ、アルバム、ランキング……すべてです。特定個人をヒントなしに探し出すのは難しいですが、ちょっと考えれば方法はありそうです。某私立有名女子校のクラス名簿が、全部掲載されていた、というショッキングなできごともありました。

わたしが最初に「プロフ」を知ったのは、2006年の秋、息子の高校受験を控えて受験生のたまり場となっている掲示板をPCで探してたどりつき、のぞいたときでした。多くの子供達が携帯からのアクセスのようでした。彼ら、最初は掲示板で知り合ってやりとりしていましたが、交流が増えて仲良くなってきたら「ゥチプロフ作ったからそっち来て」と番号だけ書いて姿を消してしまったのです。交流相手も同時に掲示板からいなくなりました。どこに潜ったのか、最初はわかりませんでした。「プロフ」「携帯」で検索して、ようやく合点がいった次第です。

膨大な数の子供と若者の携帯アドレス、そして彼らの生々しいまでの個人情報、友人知人情報。その大半はあまりに無防備な人たちです。この情報の山、どんな人たちが管理しているんでしょう。

ランキングサイトは「アクセスを上げるためのコツ」と称して、いかにパケット代を使わせるかのコツに満ちています。

小中校生の親御さん、子供の携帯ライフについて、ぜひ親子で話し合ってください。その前に、自分もできる限りの携帯コミュニケーション体験をしてみてください。

2006年10月の末、中三の息子に携帯を買いました。最初は暗証番号を息子に教えないでおこう、そうすればかなりの情報を遮断できる、と思ったのですが、それが無意味であることを知りました。チャイルドモードや制限モードもありますので、そちらを活用しようかとも思いました。

けれど、すべてオープンな状態で、利用方法を話し合うことにしました。「プロフ」の話、友だちから送られてきたメールに書いてあるURLの話、知らない人と知り合う喜びと、その裏側にある怖さの話、などなど。個人情報保護については学校で習ってよく知っていた息子ですが、プロフは知らなかったようです。「女子がプロフ作ったってメールくれた」と言うので、ああ、やっぱり広まってるんだなあ、と実感しました。これから先、息子が陰に隠れて何をするかわかりませんが、なんとか話し合いの場だけは保っていきたい。

「子供の携帯料金が高いからパケットし放題のコースにする」なんて、それだけはやめた方がいいんじゃないかしら……と、余計なお世話ですが思います。パケットをどのくらい使っているか親が把握できる契約の方が安心なのではないかしら……。

なお、もちろん、プロフは「前略プロフ」だけではありません。たくさんの業者がいます。中でどうつながってるかは知りませんが。

気になる方は、パソコンからでかまいません、いろいろ検索してみてください。

悪いことばかり、とは言いません。いいコミュニケーションも育っているでしょう。

ただ、わたしたち大人は、親であるとないとにかかわらず、若い人たちがどんなコミュニケーションを求めているのか、そしてその欲求を満たす「業者」がどんなことをしているのか、知っておくべきではないかと思うのです。



2011/11/05

『早過ぎたひと 世紀の伊達男 加藤和彦』

2011年10月15日、ハイビジョン特集で放送されたこの番組は、貴重なエピソードや証言をたくさん盛りこんで見ごたえがあった。ただ、見るまえから、見たあとさらに、いやな感じにつきまとわれている。 

なんだろう、と考えているところで、友人のブログを読んだ。きたやまおさむが10月の末に横浜で行われた茂木健一郎とのトークショーで、自死した加藤さんに対して猛烈な怒りをあらわにし「美化してほしくない」と語っていたという。それを聞いて「いやな感じ」の尻尾がつかめそうな気がしてきた。

最初に結論を書いておく。それ以後は読まなくて結構です。

「病気や事故で亡くなったのであれば素晴しい追悼番組だった」
「たった二年前に自死した著名人の美学をたたえる追悼番組を放送してほしくなかった」 


1)そもそも「早過ぎた」とはなんたる失礼、なんたる傲慢。では加藤和彦はいつ生まれていつの時代に生きればよかったと断じるのか。時代の最先端を走ったのは事実だが、早過ぎた、とはなんたる言いぐさ。 

2)「早過ぎた」にもつながるが、加藤和彦が徹底した美学を貫きとおせず、生きづらくなり自死した、とも取れる。そしてその死に方を否定しない。それも美学、と持ちあげなかったか。友人たちに明るく楽しくスタイリッシュに、きっとトノバン(加藤)はこうやって追想されたいだろう、と自死した死者の望むままでありたい番組作り、に走らなかったか(友人たちに罪はない。演出のことである)。 

3)加藤和彦の美学を賛美し、出演者もすべてスタイリッシュ。シーンもスタイリッシュ。自死を責めるひとはひとりも出てこない。坂崎幸之助に至っては、自分が加藤を音楽の表舞台に呼び戻さなければ自死はなかったのでは…ととれる発言をさせて(あえてこう書く)、だからこそ、ぼくは加藤さんの曲を歌いつぐ、と悲壮な決意を述べさせる。 

4)一般人の自殺でさえ報道でとりあげると影響された自殺がけっこうおきるという。著名人ならなおさらであろう。ましてこんな番組の作り方をしたら、「こんな天才と自分とは桁が違うなあ」で終わればいいけれど、どこでどんな影響が出るかわからないのではないか。 


考えすぎ、かもしれない。けれどNHK-FMブログの、 

  「強烈な美学を貫き、そして *美学に散った* 天才音楽家・加藤和彦さん」 
  http://www.nhk.or.jp/fm-blog/1000/97670.html 

という制作側の発言はメディアの公式な発言としてどうなのだろう。年間3万人以上、10万人のうち24人が自殺する日本の公的メディアとして。 
(参考URL・ http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2770.html ) 


全文を引用しておく。 


---引用開始 

『ハイビジョン特集“早過ぎたひと 世紀の伊達(だて)男 加藤和彦”』 BSプレミアム 10月15日(土)後10:00~11:29 (再)BSプレミアム 10月16日(日)後4:30~5:59 「あの素晴しい愛をもう一度」など数々の名曲を生み出した加藤和彦さん。多くのミュージシャンに影響を与え、日本の音楽シーンをけん引。加藤さんがいなければ、日本の音楽シーンは10年遅れていたとも言われている。そんな加藤さんの絶頂期は、生き方そのものが、時代の先端だった。貴重なギターやドラム類、高級スーツに靴のコレクション等。まさに“世紀の伊達(だて)男”と呼ぶにふさわしい姿だった。しかし、21世紀に入ると次第に才能の枯渇を感じ始めるようになり…そして、2009年10月、自ら命を絶った。 番組では、小田和正さん、泉谷しげるさん、高橋幸宏さん、坂崎幸之助さん、木村カエラさんなどのインタビューとともに、音楽だけではなく、生き方そのものに強烈な美学を貫き、そして美学に散った天才音楽家・加藤和彦さんの栄光と挫折そして、素顔に迫ります。案内役は、楽器や洋服など加藤さんの膨大なコレクションに囲まれながら、俳優・高良健吾さんが務めます。 

---引用終了

2010/07/25

クサナギツヨシが選んだ『帰ってきたヨッパライ』

どうも原曲の経緯を知らない人が多いようなので、これは一応、触れておかねばなるまい。 


「全裸事件を自嘲!? 草なぎ剛のソロ曲「帰って来たヨッパライ」に話題集中」(サイゾー・ウーマンより)



「『帰って来たヨッパライ』ってことなんで、いろいろ意見があるみたいだけど」と、世間の声を認識していることを前置きしながら「この曲、僕が選んだんですよ」と、自身の意志であることをきっぱり宣言。

さらに、ザ・フォーク・クルセダーズのボーカルであり、「帰って来た~」の作曲担当でもある加藤和彦が『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)にゲストで登場したときのことを振り返って、

「スマスマに来ていただいて、一緒に歌ったりとか。僕も去年ちょっと皆さんに迷惑かけたこととかあったりして」
「加藤さん去年ね、亡くなられてしまったりとかして」
「なんかねえ、詞を見た時に、すごい深い詞で。これをすべてエンタテイメントとして、前向きに捉えることができるんじゃないかなと思ったんですよ」
「いろいろ曲は他にもあったんですけど。すべて含めてこの曲がいいなと思って、この曲にしてみました」 


1960年代半ば。京都。 

『帰ってきたヨッパライ』は、アマチュアグループ、ザ・フォーク・クルセダーズ(当時はザ・フォーク・クルセイダーズ)の活動とは別に、加藤和彦が、後のミカ夫人を通して知り合った生涯の盟友の一人、作詞家でイラストも描く松山猛と毎晩あれやこれやと1曲ずつ気楽に作っていたうちの一曲です。 

最初は5人いたメンバーも、最後は加藤、北山修、平沼義男の3人になり、大学に戻るため解散する記念に何か、ということで北山の父から20万円借りてアルバム『ハレンチ』を作ることになりました。所詮素人の300枚のアルバム。ほとんどはありもののの曲でそろえたものの、やはり曲数が足りない。そこで『帰ってきたヨッパライ』を加藤が北山と平沼に提示したところ「おもしろい」と盛り上がる。 

加藤が松山と作っていたのはシンプルに「オラは死んじまっただー、天国よいとこ一度はおいで酒はうまいしネエちゃんはきれいだ」の歌。当時交通事故が多く、ヨッパライ運転防止の歌?みたいなノリで作ったと松山は後に語っています。そこに、北山が「なぁおまえー。天国ちゅうとこはそんなに甘いとこやおまへんにゃ。もっとまじめにやれー」と、最後のお経~ア・ハード・ディズ・ナイト~の部分を付け足しました。加藤も平沼もアイディアを出したようです。 

それでこの曲の作詞者は松山一人ではなく「ザ・フォーク・パロディ・ギャング」となっています。 

加藤は北山の妹が英会話の勉強に使っていたオープンリールのテープレコーダーを早回しすることで「カワイイ声」を作ろうと発想します。このあたり加藤の天才を感じさせます。 

この曲がアルバム『ハレンチ』(iTunesストアでも買えます。が、あえてこの曲が入った1枚を買うのなら『紀元弐千年』をおすすめします)となり、松山の「サイケ」なデザインに世界の民謡や不思議な歌をちりばめた一枚に。しかし、売れません。加藤や北山が関西の知り合いのラジオ局にかけてください、と言って回り、やがて爆発的ヒットとなりました。高度経済成長の最中であり、70年安保の手前です。 

後に北山は精神科医として母子関係、共視論などの研究を深めてゆく中で、この曲の中に三角関係を見いだします。 

オラ-ネエちゃん-神様-オラ 

という三角形です。オラはずっとネエちゃんと仲良くしていたい、でも神様がじゃまをする。 

またエディプス・コンプレックスという有名な三角形があります。 

息子-母-父-息子 

息子は父を殺し、母と同衾します。しかし、壊れてゆく。 

いずれの三角形も「父」が男の子と女の間を切り裂こうとする。この曲を完成するにあたり、父性を、北山は無意識のうちに体現していたのです。そして、父性が消えてゆく時代へと突入してゆく中、平沼は家の事情で脱退、学生運動最盛期で大学の門は封鎖され「1年間通学しなくても単位がもらえる」というチャンスに、北山は加藤を誘い、加藤がはしだを誘い、三人で新生ザ・フォーク・クルセダーズとして1年間と区切りをつけて活動しました。そして1年後、約束通り解散し、解散後に数枚のシングルを出して、フォークルは存在しなくなりました。 

というわけで、実はこの録音版『帰ってきたヨッパライ』に、はしだのりひこは参加していません。が、ステージでは「オラ」を担当しました。 

その後の各自の活躍は皆さんご存じのことでしょう。 

加藤和彦はサディスティック・ミカ・バンドをはじめとして、ボーカリスト、演奏家、作曲家でありながら、プロデュースにもっとも気持ちを割いたようです。泉谷しげるの『春夏秋冬』も、吉田拓郎の『結婚しようよ』も、加藤のプロデュースとアレンジがなかったら、あれほどのヒット曲にはならなかったでしょう。後に安井かずみ夫人と彼女の死までヒット曲を量産。彼が自分の「ボーカリスト」としてのたぐいまれな資質を軽く見積もっていたことが残念でなりません。 

はしだのりひこはシューベルツ、クライマックスなどで北山の詞を得て「風」「花嫁」などの大ヒットをとばし、一時専業主夫を経て、現在ソロ活動中。 

北山修は医学の中で精神科に進もうか、と迷いつつ、やはり一通りの処置もできない医者ではいけない、と内科の研修を受けた後、イギリスで2年間の留学の間に出会った教授たちの影響もあり、完全に精神科への道を定め、たくさんの論文や著作をなし、九州大学で20年間教鞭を執った後、名誉教授として退官し、これからは一臨床医及び後進の指導にあたりつつ、年に数回はトークやライブを行ってゆくようです。



この詞を「深い」と言ったクサナギツヨシはすごい。論理的ではなく、直感的に感じたのでしょう。つかこうへいの舞台『蒲田行進曲』で、銀ちゃん、小夏、ヤスの壮絶な三角関係を演じきりました。それはあまりにこじつけかもしれませんが…。 

蒲田のとき、クサナギツヨシは「台詞を言っていると自然にそういう気持ちになってゆく」というようなことを言っていました。この歌を口ずさんで、何かを感じたに違いありません。 

加藤の自死は、いくら惜しんでもあまりあります。つかこうへい先生が、生きたくても生きられなかった。同世代、団塊の世代の天才二人が、去年、今年と去ってしまったことが悲しくてなりません。 

ちなみに北山は加藤との唯一のデュエットシングル『あの素晴しい愛をもう一度』をあとから考察し、 

“同じ方向をみて心一つと誓っていた二人が別れる”ことを、母子関係にたとえています。 

3歳、4歳、5歳のかわいい盛り。赤とんぼをおいかけたり、花を摘んだり、一緒に楽しく同じ未来を見て「ずっと一緒」と生きてきた母子。しかし、やがて子はそれを忘れてしまい、独り立ちしてゆきます。母は寂しく「心と心が今はもう通わない」と嘆きますが、旅立つ子供を頼もしくも思う、揺れる心。 

音楽はどんな風に解釈してもよいけれど、わたしはこの解釈がとても好きです。 

話がそれましたが、クサナギツヨシの『帰ってきたヨッパライ』については、きたやまおさむさんのご意見をぜひとも伺ってみたいものです。


【後日談】
TBSラジオ土曜ワイド(永六輔)にきたやまおさむが出演、それまでなにもジャニーズ事務所からコンタクトがなかったのだが、事務手続き上の不備だったようで、法的に使用して良い旨伝えたところ、クサナギくん自身からきたやまさん宛にお詫びとお礼の手紙が届いたそうです。縦書きだったと驚いていました。「クサナギくんバージョンのアレンジいいよね」とのことでした。

2010/07/16

バックさんアップさん

昔々、日経クリックという雑誌に連載していた漫才コラム。ネタ作りから全部自分一人だったからしんどかったけど、楽しいお仕事でした。またイラストの山口さんがいい味のCG作って下さって…。

これは最後期なのでいまいちですけど、ツイッターとちょっとつながるし、ま、発掘したので。



Date: Mon, 21 Sep 1998 18:10:53 +0900

バック(以下バ) あー、びっくりした!
アップ(以下ア) どないした?
バ 親戚の女の子とお茶飲んでたらな、突然「あーっ!」言いよんねん。
ア 女の子が。
バ 「あーっ!メールやわ」。
ア メール?
バ 「今、アタシにメール届いてん……」目すわっとんねん。
ア コワいな。なんでメール届いたんわかるねん。
バ なんか電波が来たらしい。
ア 危ないがな。
バ いやいや、マジにPHSの電波が飛んで来たんや。
ア PHS?
バ あるやろ、Pメールとかきゃらメールとか。
ア あー、文字メッセージ。ポケベルみたいなサービスや。
バ いま女子高生が「メール」言うたらPHSの文字メッセージのことや。
ア E-mailとちゃうの。
バ そや。そのメールが届いてブルッて「あー」や。
ア バイブレーター受信ね。
バ パッとウィンドウ見て、ギャハハハハハと笑って。
ア どんな内容やねん?
バ 「ナニシテルノ?」
ア つまらんな。
バ タタタタタタッ……すごい勢いで返事打って送りよんねん。
ア 返事は?
バ 「オヤジトオチャ」
ア ムカつくなー。
バ すぐ返事が来て「ゲロダサー」
ア なに?
バ 「すっげえダサい」ってこと。
ア 日本語かそれは!
バ 「カレシ?」「シンセキ」「カネモチ?」「ビンボー」「ゲロダサー」
ア やめんか、それは!
バ ほっといたら延々メールのやりとり。
ア 電話したらええやないかい、電話やねんから!
バ ところがこの文字コミュニケーションがオキニ。
ア お気に入り。キミがうつってどないすんねん。
バ 授業中、仕事中でもメッセージのやりとりができる。
ア とんでもないな。
バ ある調査によると、某PHSキャリアの総発信数の4割が文字メッセージ。
ア ほんまかいな。
バ 和歌俳諧は日本の伝統。もともとショートメッセージが好きな国民。
ア そんな大層なもんか! 子どもの遊びや。大人ができるか「ゲロダサー」。
バ いや、大人にもはやっとんねん。大人バージョンが。
ア どんなバージョンや。
バ 漢字メッセージ。
ア ああ最近漢字対応の文字メッセージサービス増えたからな。
バ 「遅乞許泣」
ア なんやそれ。
バ 「遅れる許してごめーん(泣)」
ア 普通に打て!
バ 漢字に変換するのめんどうやから簡略になんねん。「午前閉鎖」
ア 午前中に戸を閉める?
バ 「午前様になったら家に入れないわよっ」
ア なるほど。
バ 「六四.五水ガ浴別」
ア はあー?
バ 「六畳四畳半水道ガス完備浴室トイレ別」
ア 不動産の広告か!
バ PHSやケータイでワビサビを味わおう!
ア 勝手にやっとれ!
 

息子の決意

息子が書いた文章です。

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人は心の底では嫌っていたり苦手としている物事にあえて歩み寄るという天邪鬼な態度を無意識に取る事があるが、これは一種の防御反応であると思う。 
つまり、近寄り難く逃避し続けていた物事対するプレッシャーが限界を超え、逃避という手段すら手詰まりだと感じた時、逆に相手の懐に飛び込むことで相手を知りそこから活路を見出そうとしているのだ。 
トラブルシューティングの方法論としては良さそうなものだが、ここで忘れてはならないのがこれは論理的思考に起因するものではなくあくまでも本能的反応で、熱湯に手が触れた時すぐに手を引く行為と同じものだということだ。 

こんな記憶は無いだろうか。 
試験前ということで苦手科目の勉強に着手する。最初はテキストを広げるのも嫌だったが、あぁでもないこうでもないと格闘しているうちに段々楽しくなって来る。 
「何だ、やれば面白いじゃないか」 
と。 

さて、あるという方にお尋ねしたい。 
今もその科目と仲良くやれているだろうか。 
その体験を切欠に苦手科目と和解を果たした方ももちろんいらっしゃるだろうが、全員が全員そうでは無いはずだ。 
一時結ばれた停戦条約が虚しく決壊してしまった方、思い返して頂きたい。 
「少し楽しいと思えたけどやっぱり馬が合わないらしい」 
と感じる瞬間は割と早く訪れたのではないだろうか。 

私など人生で何度古典と歴史相手に停戦条約を破綻させて来たか、もはや数えきれない。 

和解を果たした人とそうでない人、二者間の差を生み出した要因の一つに、本当に基礎が理解できたのか、という事があると思う。 

次のステップに進む際に絶対に抜けてはならない基礎基本は必ず存在し、それを欠かせば以降の学習が捗る理由が無い。 
助動詞の活用表を覚えずに古文は出来ないし単語力の無い人間が始めから英文に噛り付いても日が暮れるだけだし三角形の角度と対辺が与えられて正弦定理を連想出来ない様では図形問題など論外である。 
「いやそんなことは無い出来る」 
という意見も稀に見るが気の迷いである。意見を覆させざるを得ない壁にぶち当たる日もそう遠く無いかと思う。 

勉強の起点はこれら各科目で常識とされている事を知る事にあり、学校配布のワークの各章冒頭に配置されている用語の穴埋めや文字式に数値を代入するだけの問題を解いたり、うんうん頷きながら巻末の解答をノートに書き写したりすることではない。しかしこれら基本を謳うがその実ただの子供騙しの問題は基礎基本が一通りインストールされていなくても難無く解けたりする。 

そういった問題を解く、目の前の問題が解決される。ここだ、ここに騙される。だって俺がそうだったんだもん。 

明らかに必要な基本が欠落しているが、中途半端な生分かりでも良しと思ってしまうのだ。 
何故かと言えば今まで全く食えなかった科目に少し近づけた様な気がするからだ。早い話が好意的勘違い、メールに珍しくハートの絵文字が混ざっていただけで惚れる男の心境みたいなものだと思う。
生分かりに不気味さを感じ取らないのは得意科目をやっている時にはあり得ないことのはずだ。 

当然、そういう場合は実は分かってないのだからすぐに詰まる。 
基礎に忠実な人でも壁に当たる時は必ず来るが、それとは状況が少し違う。 
生分かりの人は詰まった場所のレベルで奮闘してもトラブルは解決しない。基礎に帰って助動詞活用表を覚えたり英文法を掘り下げたり図形の定理の運用練習をしたりしない限り次へは進めないのだ。 

ここら辺で我慢が効かなくなり、苦手科目との停戦条約が決壊するのでは無いだろうか。 

安心を求める本能的防御反応に従い、漠然とした「イケる」といった感覚に身を任せてばかりいると本質を省みることを忘れ、かのような結末を迎えかねない。 

しかし、始めは生分かりでもこの段階で諦めなかった人は見事友好条約の締結に成功したことだろうと思う。例え生分かりの錯覚であっても、半ばアレルギーのような嫌い方をしていた科目に歩み寄れるというのはチャンスには違い無い。 
もしも今勉学において苦手科目を楽しいと思えて来た人が居るならば、そういう機会を無駄にしないことを切に願う。 



どう見てもここまで全て自分への言い聞かせ 
俺は高校生に入って以降いくら待っても古文が心を開いてくれないので残念ですがゲロを吐きながら嫌々人生で5度目くらいの古文の基礎勉強をはじめます今度は文法の段階で諦めて投げ出さないぞーおー 
教科書に書いてあるレベルのことを大事にしよー 
思えば将棋の勉強をやめた理由も定石を覚える事を放棄してあるレベル以上の他人に勝てなくなったからだったなぁ悪癖だいっそ死のうかなフヒヒ



2010/07/13

喪失 不在

ある朝起きたら、輝いていて当たり前だった太陽がなかった。

本当に、唐突になかった。

ちらっと太陽の具合が悪いらしいよ、という話はきいていたけれど、
まさか突然消えてしまうなんて夢にも思わなかった。

だから、それは闘病の末の、がんばり抜いた、生き抜いた到達点ではあるけれど、
突然知ったわたしには、まるで太陽がなくなったようだった。

もう:荼毘にも付され、お別れの会もないという。

先生らしい。うん、らしいですよ、先生。

「ばか、あとはおまえ、自分の希望は自分で見つけろ!俺がヒントたくさんやっただろ」

って、どこかからしかられる声が聞こえるような気がします。

「だけどなあ、お前は本当にばかだから、わかんねえかもな(笑)」

そんな意地悪な声も…。

でも全部愛だった。愛ばかりの人だった。
誰もがそういう。
先生と接した人は。

愛を与えることばかりで、自分が愛されることをうっかり忘れていたりした。
思い出して、さみしがってたりした。

「いつも心に太陽を持って、みなさんは生きていくのです!」

きっと、太陽は昇るでしょう。

何ヶ月、何年先になるかわからないけれど。

先生、本当に本当に、ありがとうございました!

ありがとうございました!

2010/06/22

最近の#twnovel

【父の日】 
今日は父の日。私のお父さんの楽しみは、テレビで巨人戦を見ながらお酒を飲むこと。ささやかなサラリーマンの楽しみ。そして巨人が負けると母を渾身の力で殴ること。お父さん、今夜のお酒にプレゼント入れるから永遠に巨人の夢見てね。これ、母の日のプレゼントの方がよかったかな。 

【空襲】 
夜中、ぐっすり寝入っていた僕は「オサム!起きろ!空襲だ!」という声に飛び起きた。父が家中を走り回って家族を起こしている。昨日まで寝たきりだった父が!「父さん!オサムだよ、わかる?」。父は目の前の中年男とオサムが結びつかない。遠くにパトカーのサイレンが聞こえる。 

【とりかかれない】 
妻に支えられ、ようやく医者にたどり着いた。もう何ヶ月も家を出ていない。問診などのあと、医師は「とりかかれない症候群ですね」と言った。何かを「する」気持ちはあるが「とりかかれない」病だ。それはつまり「できない」。「何かできることは!」と問うと医者は「生きてます」。 

【お題・襲撃】 
「あたくしの肌?あらいやだ、何もしてませんのよ。50歳に見えない?またそんなあ。本当ですのよ、顔を洗う。それだけですのよ。ええ普通の石けん」。そのとき、開け放した窓から蜂の大群が彼女を襲撃した。塗りたくったロイヤルゼリーの仇討ちであった。 

【お題・スイーツ/昼寝/襲撃/神】 
「あんみつはあんみつだ。なんだスイーツ特集って。帰れ帰れ!ったく、ああいうのを見て襲撃しやがるんだ、ギャルってのがよ。ああー頭痛てえ。ちょっと昼寝するわ」。それっきり爺ちゃんは目覚めなかった。今頃神様に「俺ぁ仏教だ!」って喧嘩売ってるな。 

【同時多発テロ】 
「何!同時多発テロ!」。警視庁に緊張が走った。「どこからの情報だ!」「気象庁です!」「気象庁?」。気象庁では、各地からの異常現象にてんてこまいだった。「山梨で集中豪鰯!」「岡山で集中豪鰺!」。しかし一番多いのは、豪雨のように降り注ぐカエルであった。同時多発ケロ。 

【ネクタイ】 
父の日、娘がネクタイをパパにプレゼントした。安物ばかり締めているパパが見ても、ものがいい。「だめだぞ、無理しちゃ」「大丈夫。絶対似合うから毎日してね」。パパは嬉しくて毎日そのネクタイを締めて出社した。夕方になるとママと娘はパソコンの前でGPSをチェックしていた。 

【籠の鳥】 
「♪籠の鳥とんだ、屋根まで飛んだ、屋根まで飛んで、重くて落ちた」「だから不倫はよしなさいって言ったじゃない」。 

【壁打ち】 
僕には友だちがいない。だから毎日壁相手にボールを投げ、ボールを打つ。壁に跳ね返ったボールを受け、また投げ、打つ。壁を夕日が染める頃、僕はとぼとぼと家路をたどる。投げても投げても、そのまま帰ってくるだけの僕のかわいそうなボール。僕の前に立ちはだかるのは、言葉の壁。 

【素直な人】 
俺だ、小沢だ。そんな情けない声を出すな。電話越しにとって食えるか。…黙るな。そこはつっこむとこだろう。面と向かったって食えないでしょう、とか、食えないのはあなたですよ、とか。…メモするな。今後海外要人と会うときに使える?…とりあえず首洗っとけ。…本当に洗うなよ! 

【でんじろう】 
「ペット いわいでんじろう。ぼくはペットのでんじろうがだいすきだからぼくとおなじなまえをつけました。パパはぼくがうまれたとき、うれしくてうれしくてすきすぎてぼくにおなじなまえをつけました。パパがママとけっこんしたのは、もちろんママのなまえがでんじろうだからです」 

【理論】 
つまりね、簡単に言うと、石橋というのは石と石とが、ぎゅっ、と押し合う、その圧によって弓なりでなりたっているわけ。難しいことは言っても無駄だろうから省くけど計算上そういうことなわけ。その石橋がね、頑丈な石橋が、落ちた、と。そういう歌なんだよ、ロンドン橋というのは。 

【非実在】 
児童ポルノの氾濫が看過できぬ状態となり、ついに政府が動いた。「少年少女の性的イメージはいかん」「まったくさようで」「法律を作れ」「はい」。しかしいざその段になって官僚達は困った。少年少女とは何歳まで?平均寿命1億5千年のトチジ星人は悩む。 


【悪人】 
俺は悪人である。どうだ。どうだと言われても困るだろう。お前に直接悪さは出来ない。俺は所詮2次元の悪人だからな。だから読んでるお前が気持ち悪くなることをいっぱい言ってやる。覚悟して読め!さあ…ウンコ!…なんだその半笑いは。オバケ!…おい、嫁を呼ぶな。二人で笑うな! 

【漫画家の弟子】 
僕は中学高校と漫研の部長だった。後輩を連れ迷いもなく和田ラヂヲ先生の門を叩いた。門から家まで5キロあるので、一時間ほど待った。先生は「僕は弟子は取らんのだが」とお定まりの台詞。「先生、筆名を考えて参りました」「何」「和田ラヂヲと暇なスターズ」「役に立たねえよ」。 

【なか卯】 
3日前から何も食ってねえ。ようやく田舎町に入った。この時間にやってる店は少ない。飢えた狼のように眼をぎらぎらさせ、ついになか卯の灯りを見つけた。涙が出た。俺はよろよろとなか卯に入った。「…小うどん」「はい」「と…お前だあーっ!」 

【鉄道研究会】 
大学に入学して迷わず鉄道研究会に入った。「君、乗り鉄?」。先輩が微笑んで聞いてくれたので勇んで答えた。「僕は、終着駅なのか始発駅なのかを決める研究をしたいんです!」。先輩達の顔が凍り付いた。やはりこれが、鉄の中で触れてはいけない永遠の謎か。僕はまた一人旅に出た。 

【忘れてないかもう一人】 
どんぶらこっと。おっと、また言っちまった。「どっこいしょ」って言うんだよな。ついつい昔の癖が出ちまうよ。えーっと、何するんだっけ。あっ、今日も一日署長だ。熊谷だっけか?交通事故防止、犯罪防止、正義の味方のお仕事だ。頑張ろう。え?桃太郎?誰それ。俺一寸法師だけど。 

【記憶】 
記憶は嘘をつく。特に子供の記憶ほど当てにならぬものはない。それは子供が主観的な生き物だからだ。小さな世界で物語を作ってしまう。大人だって似たようなものだ。記憶は嘘をつく。その嘘を点検するのが老後の楽しみだった。が、僕の記憶は嘘どころか嘘どころか、何の話でしたか? 

【今はテーブルマーク】 
母ちゃんが出て行った。親父はパチンコと競馬で帰ってこない。好きなものを食べていい。加ト吉の冷凍うどんをしこたま買い込み、毎日考えたレシピを集めた『ウドンデス中学生』が大ヒットした。父ちゃん母ちゃん、帰ってきて。一緒にうどん食おう。 

【約束】 
若者が駅のホームにじっと立っている。老いた駅員が彼に近よると、若者はすっ、と消えた。「ああ、君か」。十数年前、ここで恋人同士が待ち合わせをした。が彼女は来なかった。彼は東京で結婚して子供もいると風の便り。東京の彼は自分が毎年ふるさとのホームに来ることを知らない。

#twnovel 5月頃

【見合い】
こーん、とししおどしが石を鳴らした。和室の若い二人は、どう会話していいかわからない。「あの」「はい」「いや…」。こーん。「あの」「はい」「僕は、恥ずかしいのですが女性とつきあったことがないんです」「わたしも真面目すぎるって言われてます。今まで、ノンパコなんです」
【二郎】
風呂屋の二郎が煙突のてっぺんに立っている。「おうい、二郎、何しとる」。二郎は仁王立ちのまま風に吹かれている。町内の人々が集まってきた。「おうい、二郎、降りてこい」。二郎は煙突の上から叫んだ。「父ちゃん!母ちゃん!おいら、風呂屋、継ぐよ!」。二郎は面倒な男だった。
【作家】
俺は職人作家。オーダーがあれば何でも書く。本格ミステリから純文学、携帯小説、麒麟の漫才、自伝のゴースト、いしかわじゅんの漫画のゴースト、そうだ、絵だって描く。ネタ枯れやスランプなんて言葉は無縁だ。ただ、ここ数年は新しい仕事は無理だ。広辞苑のゴーストは骨が折れる。
【高い男と低い男】
オレオレ詐欺のニュースが終わった。「お疲れさん。次はTBS?」「はい、でCXです」「君達しかいないからね」。二人の男は頭を下げ、急ぎ足で次へと向かう。二人の男は“声の低い男”と“声の高い男”とだけ呼ばれている。低い男は犯人の声、高い男は被害者の声を担当している。
【7分】
老いた父が、7分ずれた。ぼけたのではない。ずれた。俺が7分前に入っていたトイレに向かって「早く出なさい」という。夕食が終わった7分後に「旨いね」と洗い物をする母の背中に言う。テレビの漫才が終わった7分後に笑い出す。心停止7分後、父は「ありがとう」と言って死んだ。
【困った】
「今晩は小鳥よしおです。あ、すみません、これ裸ですけど、これ衣装なんで…。あの、今夜泊めていただけませんか?えっ、そうですか、ありがとうございますm(_ _ )m。では今からお邪魔します」。結婚するときは面白い人だと思ったけど、毎日こんな帰るメール、ウザいわー。
【ハーレクイン】
恥ずかしいけど、ハーレクインにはまってる。恥ずかしいっていうのは貶めているのではなく、キャラじゃないってこと。だって人殺しだもん、俺。報酬でホテルを転々としながら夜ごとツイッターでつぶやく。「こんな恋してみたい」。「私も」「私も」。オフ会に出られないのが悲しい。