2010/04/13

夫、深川岳志の#twnovel 10選

手前味噌ですが、夫のツイッターノベル(#twnovel)、私の好きな厳選10編です。
ツイッター小説大賞にも応募しましたが,残念ながら一次審査で全部落ちてしまいました。
とても悲しいのでここに並べます。
ご笑覧頂けましたら幸いです。



作・深川岳志 @noraokapi

「喪中」

「両親、妻子、みんな死んでるじゃないか。保険金狙いで殺したんだろ」「ちげーよ」「しかも結婚十回ってなんだよ」「警部」と名探偵が言った。「なぜ毎年一人ずつ殺していると思います? 喪中ですよ」「うおお。書きたくなかったんだよお」年賀状嫌いの犯人は号泣して罪を認めた。 #twnovel

「三兄弟」

うたた寝して、はっと気づいたら机の隅で三兄弟が踊っていた。「ねむい」「だるい」「はらへった」三兄弟を鷲づかみにして、空箱に放り込む。すこし油断すると、すぐにあらわれるのだ。幻覚を持って精神科を訪ねた。箱を開けると、空っぽ。不審げな医者の頭の上でうつ三兄弟が踊る。 #twnovel


「膝の猫」
猫が亡くなったので動物寺に埋葬してきた。悲しさのあまりソファにあぐらをかいて茫然としていると、いつの間にか膝の間に猫がいた。「ん、おまえ軽くなったな」って、さっき埋葬したところじゃねえかっ。うとうと眠っていた猫は、だからなんだというふうに薄目を開けておれを見た。 #twnovel


「権ピューター」
脳にコンピュータチップを埋め込んだ権蔵じいさんのもの忘れが激しくなった。「完璧な記憶力だったのにどうして?」「メモリーが足りなくなって重要度の低い記憶を消していったんじゃ」「それでいいんじゃないの?」「大切な記憶は残すべきじゃった」権ピュータはしくしくと泣いた。 #twnovel


「分け入っても」
「分け入っても分け入ってもドアの鍵」「さすが警部殿、山頭火のもじりでありますか」「うるさい。一体何枚あるんだ」「135枚です」「なんでこんな家を造りやがった」「主人が死んでしまったので永遠の謎です」「念の入った密室殺人だな」「いえ、部屋の窓は開けっ放しでした」 #twnovel


「便利屋」
便利屋が挨拶に来た。いつの間にか家に上がり、夕飯を食べている。「こんなにのんびりしていていいんですか」と私は晩酌しながら尋ねた。「私どもの仕事は不便を見つけるところから始めるものですから」一ヶ月滞在した後「じつに快適なお住まいです」といって便利屋は去っていった。 #twnovel


「貧乏くじ」
「貧乏籤に当選いたしました」という電話がかかってきた。そんな縁起の悪いものを買った覚えはないというと、宝くじだという。宝くじにはプラスの当たりとマイナスの当たりがあるというのだが、にわかには信じられない。ほんの出来心で、私は2億円の借金持ちになってしまった。 #twnovel


「歩」

太平洋から九匹の怪獣「歩」が上陸し、日本海側からも同じく九匹の「歩」が上陸して日本中が大騒ぎになった。続いて「槍」「桂馬」「銀」「金」「飛車」「王」が上陸し、自衛隊の邪魔をものともせずに勝負を開始した。夜になると次の一手を封印して、怪獣たちは深い眠りに落ちた。 #twnovel


「猿飛佐助なう」
「十四代目猿飛佐助、なう」「なう、てなんだ」「すみません。現代風にアレンジしてみました」「失敬な。私を誰だと思っておる。言い直せ」「十四代目猿飛佐助ただいま参上」「よし。用件をいえ」「お命頂戴」「あ、そういうことは秘書官に」首相の首がころりんと転がった。 #twnovel


「があちゃん」
帰宅すると、エプロンをつけたあひるが出迎えた。「があー」「があちゃんか。おまえ、かあちゃんは知らんか?」「があー」があちゃんはけっこう器用に家事をこなした。なぜわたしの世話を焼いてくれるのかはよくわからない。「おまえ、ひょっとしてかあちゃんなのか?」「があー」 #twnovel