2011/12/11

「前略プロフを知っていますか」

この文章は、2006年11月7日、mixiに投稿したものです。

楽天は前略プロフから撤退とのこと。
まるで何もなかったかのように過去に埋もれていくのかな、
と感慨を覚えつつ、再アップします。
文章は当時のままです。

****************************************************************


既にご存じの方にはごめんなさい。

もしご存じなくて、特に小中高校生の親御さんでお子さんが携帯をお持ちだったら、続きをぜひお読みください。

「ブログ」がらみの事件や問題がたくさん報道されていますが「うちの子はパソコンやってないから関係ない」とお思いではありませんか?

お子さんに「お友だちでプロフっていうの作ってる人いる?」と聞いてみてください。構えず、さりげなく言う自信がなかったらやめましょう。今後、警戒されるかもしれません。

ブログとプロフ、どっちが普及しているのかわからないけど、中高生の間ではここ数年急速にプロフが伸びているようです。PCなら「プロフ 携帯」でGoogle検索してみてください。できれば携帯のインターネット機能で「プロフを検索してみてください。


※携帯からの利用は通信料がかかります!! それをご承知の上でお願いします。


かなり最初の方に「前略プロフ」というのが出てくると思います。中高生の掲示板で「プロフ作りました。番号は……」と書いてあったら、ここかも。流れに乗れば、簡単にプロフが作れます。無料です。auやドコモなどキャリアの公式ホームページサービスとは異なり、携帯の暗証番号を登録する必要もありません。つまり、「通信料が高くなったわね」以外、まったく親に怪しまれることなく作ることができるのです。

プロフ」はもちろん「プロフィール」の略です。「ブログ」や「ホームページ」を作るには、なんらかの動機が必要です。何かを発信したい、表現したい、という動機。それをクリアした人が手を出す。だから一歩踏み出さない人の方が多い。

ところが、プロフィールを書くだけなら動機なんかいらない。PCのネットでも昔からプロフィールや100の質問系はありましたが、ここ数年「バトン」のおかげでこの手のものが加速しているかも。「前略プロフプロフを作るのは実に簡単です。ニックネーム、性別、血液型、星座などを入力。あとは登録した携帯メールに届いたURLから管理人室へ。

そこでは「ゲスブ」(もしくは「ゲス」)を作ることができます。最初に管理人室に入ると、ひときわ大きな文字で「ゲストブックを作る」が出てきます。「ゲスブ」はゲストブック(掲示板)の略なんですね。「プロフ」と「ゲスブ」を作ったら、「プロフ」のURLを友だちに送ります。もちろん携帯で
OK。友だちはプロフにアクセスし、ゲスブにカキコ(書き込み)したりします。

でも、自分もプロフを持っていないとハブにされる場合もあります。「プロフもなぃ人のカキコとか基本シカトだから」みたいな発言、宣言をけっこう見ます。「タメ(同学年)です!絡もー!(カキコやレスしあおう)」とカキコしてもシカトされる。「プロフ(は)?」と冷たくあしらわれるだけマシ。だからますます「プロフ」を作る子供が増える。

「ゲスブ」にはランダムにランキング業者が書き込みに来る。「ランキングに参加しませんか!」「あなたのプロフ画像がこのサイトのトップ画像になります!」とか書いてありますけど、そんな引きがなくても「たくさんの人と絡みたい」と思えば登録するわけで。このランキング業者、いくつかあるけどほとんどつながってるんじゃないだろうか。だってAに行くとBの宣伝が、Cに行くとAの宣伝が、Bに行くとCの宣伝が……と芋づる式。ちなみにこの手のランキングサイト、PCでも見ることができますが、異様なスピードでリロードしてる。気持ち悪いです。気持ち悪いどころか、このページを開くと、戻るアイコンを押しても前のページに戻れません。ああ気持ち悪い。携帯からこういうページにアクセスすると、何が起きるんだろう?
そもそもこれは、リロードしてるだけ? 何か情報抜いたりしてない?
とんと無知なので勝手な推測ですが、とにかく気持ち悪い。

前略プロフの検索に適当な言葉を入力してもいろいろなプロフを見ることができますが、このランキングページからもプロフに飛ぶことができます。小学生(!)中学生、高校生、ヴィジュアル系、萌え系……様々なジャンルに分かれています。ためしに中学生のランキングを見てみたら、「登校拒否です」「死にたい」「ゥチも死にたいことょくぁる」なんて書き込みのあるゲスブを持つプロフが上位に来てたりする。子供たち、手軽にこういう話をする場所がほしかったんだね……。悪い方向に転がらなきゃいいんだけど。悪い大人に利用されたり(涙)。

「登録する方へ。リンクタグつけないと順位上がらないよ」とか、とにかく子供が(子供に限らないけど)登録したくなる、登録しなくちゃと焦る要素てんこもり。さらに「アダルトなサイトはダメ!こっちにとんでいって!」とアダルト系の情報はありませんよ、って顔をして、そこをクリックすればアダルトページのランキングへ一直線。ああー……。

そうそう、小学生のランキングには、小学生ジャンルをクリックしたくなる悪い男の人向けのプロフがたくさんありました。ていうかほとんどそうだった。いきなり着メロサイトに飛ぶのなんてかわいい方。エッチ系山盛り。おー、この女の子、携帯までさらしてるよ!「ヒマできたらワン切りするからかけてぇ」だってさ。業者ですね、これは。ろくでもない業者ばっかりだな。でも、マジの小学生がこんな所にうっかり登録しちゃったらどうなるんだろう……(怖)。だいたい、小学生のふりしてこんなプロフを作っていいのだろうか?

CGIBOY運用規則より(※CGIBOYについては後述します)

第5条 禁止行為等
◆当社は、ユーザーに対し、第4条により禁止または制限される行為のほか、下記行為を禁止します。
(中略)
・偽装画像等を設ける行為
(中略)
・本サービス登録時に、虚偽の届出をする行為

第6条 是正措置
◆当社は、コンテンツの内容またはユーザーの行為が、第4条及び第5条により禁止または制限されるものに該当すると判断した場合には、当該ユーザーに対し、当該コンテンツ公開の停止その他の是正措置を要請することができ、ユーザーは、すみやかにその要請に従うものとします。
◆前項にかかわらず、当社は、コンテンツの内容またはユーザーの行為が、第4条及び第5条により禁止または制限されるものに該当すると判断した場合には、予告なく、当該コンテンツの削除または当該ホームページの閉鎖をするとともに、以後、当該ユーザーの本サービスの利用を停止することができます。

あれれ? 禁止事項なんだから即刻削除すべきなんじゃないかしら、こういう業者? あっ「することができます」か! する義務はないんだ(爆)!

あ、楽天です、これやってるの。「前略プロフのページには何も書いてませんが、登録作業をやっていくとわかります。

子供を対象に(明らかに)していながら、広告は出会い系やら金融系やらがぞろぞろ。

でも、文句は言えません。

CGIBOY運用規則より

◆ユーザーは、対象ウェブサイトに弊社所定の広告が所定の位置に掲載されることにつき、異議なく同意します。
うわ、同意してたんだ。知らなかった。だいたい読まないでしょう、こんな長い運用規約。今回PCからだから読んだけど、携帯からアクセスした人の何%がこんなもの読みますか?
読みませんよね。

さて、できあがった「前略プロフ」に戻ってよく見ると、右下に「CGIBOY」と書いてあるのでクリックしてみます。

おおー、無料cgiサイトだ。「前略プロフもここのパーツのひとつなんですね。携帯でもパソコンでも掲示板が作れるし、日記サイトも作れるらしい。日記コーナーに進むと、日記のススメから他人の日記を読めるらしい。読んでみましょう。

ふむ。なるほど。どう考えても仕込みの業者らしい「日記」もありますね。そのリンクから、いろんなところに飛んでいける。まあ「前略プロフ」にもリンク機能があって、そこに登録されたところからどんどん飛んでいけるわけですが。

さて、携帯コミュニケーションを利用しているのは子供だけではありません。で、「日記のススメ」には「大人の日記」という項目があります。進んでみましょう。「18歳以上ですか?」と聞かれるので「はい」をクリックします。子供でもいけるような気がする。ていうか、プロフも日記も何も登録していなくても見ることはできますから。……あちゃー(汗)。こんなに簡単に読めちゃうわけですね、こんな「日記」を。もちろん本気で「あたしのこういう話読んで!」って人もいるでしょうけど、こちらも業者がいますねー。リンクをクリックさせようとしてるのが見え見え。そこから先はどこにつながっているのでしょうか……。でも文句は言えません。

CGIBOY運用規則より

当社およびパートナー企業は、CGIBOYにおける利用者の皆様の投稿等についての責任を負いません。また、当社およびパートナー企業は、CGIBOYに違法または不当な記載がないか否かを監視し、そのような記載を削除する義務を負いません。
明言してた。やっぱり義務はないんだって。

さて、再び「CGIBOY」に戻ります。「アルバム」も作れるらしい。日記もそうですが、前略プロフにリンクさせることができます。※追記・アルバムはPC用のCGIBOYサイトからしか作れませんでした。すみません。

おいおいおい……なんだこれ。こんなに素顔さらしていいのかっ! 同級生の写真まで載せるなー! そもそも「前略プロフ」のトップ画像も素顔炸裂ですが……。

思うに、彼らのかなりの部分は、携帯からしかこの世界を見ていないので「URLを教えた友だちしかここを見られない」と勘違いしているのではないでしょうか?
もちろん、積極的に「たくさんの人に見てほしい」人たちもいるでしょうが、それはそれで大変まずい。危険きわまりない。






長文、読んでくださってありがとうございました。上に書いたページ、すべて、PCから検索して見ることができます。プロフ、日記、ゲスブ、アルバム、ランキング……すべてです。特定個人をヒントなしに探し出すのは難しいですが、ちょっと考えれば方法はありそうです。某私立有名女子校のクラス名簿が、全部掲載されていた、というショッキングなできごともありました。

わたしが最初に「プロフ」を知ったのは、2006年の秋、息子の高校受験を控えて受験生のたまり場となっている掲示板をPCで探してたどりつき、のぞいたときでした。多くの子供達が携帯からのアクセスのようでした。彼ら、最初は掲示板で知り合ってやりとりしていましたが、交流が増えて仲良くなってきたら「ゥチプロフ作ったからそっち来て」と番号だけ書いて姿を消してしまったのです。交流相手も同時に掲示板からいなくなりました。どこに潜ったのか、最初はわかりませんでした。「プロフ」「携帯」で検索して、ようやく合点がいった次第です。

膨大な数の子供と若者の携帯アドレス、そして彼らの生々しいまでの個人情報、友人知人情報。その大半はあまりに無防備な人たちです。この情報の山、どんな人たちが管理しているんでしょう。

ランキングサイトは「アクセスを上げるためのコツ」と称して、いかにパケット代を使わせるかのコツに満ちています。

小中校生の親御さん、子供の携帯ライフについて、ぜひ親子で話し合ってください。その前に、自分もできる限りの携帯コミュニケーション体験をしてみてください。

2006年10月の末、中三の息子に携帯を買いました。最初は暗証番号を息子に教えないでおこう、そうすればかなりの情報を遮断できる、と思ったのですが、それが無意味であることを知りました。チャイルドモードや制限モードもありますので、そちらを活用しようかとも思いました。

けれど、すべてオープンな状態で、利用方法を話し合うことにしました。「プロフ」の話、友だちから送られてきたメールに書いてあるURLの話、知らない人と知り合う喜びと、その裏側にある怖さの話、などなど。個人情報保護については学校で習ってよく知っていた息子ですが、プロフは知らなかったようです。「女子がプロフ作ったってメールくれた」と言うので、ああ、やっぱり広まってるんだなあ、と実感しました。これから先、息子が陰に隠れて何をするかわかりませんが、なんとか話し合いの場だけは保っていきたい。

「子供の携帯料金が高いからパケットし放題のコースにする」なんて、それだけはやめた方がいいんじゃないかしら……と、余計なお世話ですが思います。パケットをどのくらい使っているか親が把握できる契約の方が安心なのではないかしら……。

なお、もちろん、プロフは「前略プロフ」だけではありません。たくさんの業者がいます。中でどうつながってるかは知りませんが。

気になる方は、パソコンからでかまいません、いろいろ検索してみてください。

悪いことばかり、とは言いません。いいコミュニケーションも育っているでしょう。

ただ、わたしたち大人は、親であるとないとにかかわらず、若い人たちがどんなコミュニケーションを求めているのか、そしてその欲求を満たす「業者」がどんなことをしているのか、知っておくべきではないかと思うのです。



2011/11/05

『早過ぎたひと 世紀の伊達男 加藤和彦』

2011年10月15日、ハイビジョン特集で放送されたこの番組は、貴重なエピソードや証言をたくさん盛りこんで見ごたえがあった。ただ、見るまえから、見たあとさらに、いやな感じにつきまとわれている。 

なんだろう、と考えているところで、友人のブログを読んだ。きたやまおさむが10月の末に横浜で行われた茂木健一郎とのトークショーで、自死した加藤さんに対して猛烈な怒りをあらわにし「美化してほしくない」と語っていたという。それを聞いて「いやな感じ」の尻尾がつかめそうな気がしてきた。

最初に結論を書いておく。それ以後は読まなくて結構です。

「病気や事故で亡くなったのであれば素晴しい追悼番組だった」
「たった二年前に自死した著名人の美学をたたえる追悼番組を放送してほしくなかった」 


1)そもそも「早過ぎた」とはなんたる失礼、なんたる傲慢。では加藤和彦はいつ生まれていつの時代に生きればよかったと断じるのか。時代の最先端を走ったのは事実だが、早過ぎた、とはなんたる言いぐさ。 

2)「早過ぎた」にもつながるが、加藤和彦が徹底した美学を貫きとおせず、生きづらくなり自死した、とも取れる。そしてその死に方を否定しない。それも美学、と持ちあげなかったか。友人たちに明るく楽しくスタイリッシュに、きっとトノバン(加藤)はこうやって追想されたいだろう、と自死した死者の望むままでありたい番組作り、に走らなかったか(友人たちに罪はない。演出のことである)。 

3)加藤和彦の美学を賛美し、出演者もすべてスタイリッシュ。シーンもスタイリッシュ。自死を責めるひとはひとりも出てこない。坂崎幸之助に至っては、自分が加藤を音楽の表舞台に呼び戻さなければ自死はなかったのでは…ととれる発言をさせて(あえてこう書く)、だからこそ、ぼくは加藤さんの曲を歌いつぐ、と悲壮な決意を述べさせる。 

4)一般人の自殺でさえ報道でとりあげると影響された自殺がけっこうおきるという。著名人ならなおさらであろう。ましてこんな番組の作り方をしたら、「こんな天才と自分とは桁が違うなあ」で終わればいいけれど、どこでどんな影響が出るかわからないのではないか。 


考えすぎ、かもしれない。けれどNHK-FMブログの、 

  「強烈な美学を貫き、そして *美学に散った* 天才音楽家・加藤和彦さん」 
  http://www.nhk.or.jp/fm-blog/1000/97670.html 

という制作側の発言はメディアの公式な発言としてどうなのだろう。年間3万人以上、10万人のうち24人が自殺する日本の公的メディアとして。 
(参考URL・ http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2770.html ) 


全文を引用しておく。 


---引用開始 

『ハイビジョン特集“早過ぎたひと 世紀の伊達(だて)男 加藤和彦”』 BSプレミアム 10月15日(土)後10:00~11:29 (再)BSプレミアム 10月16日(日)後4:30~5:59 「あの素晴しい愛をもう一度」など数々の名曲を生み出した加藤和彦さん。多くのミュージシャンに影響を与え、日本の音楽シーンをけん引。加藤さんがいなければ、日本の音楽シーンは10年遅れていたとも言われている。そんな加藤さんの絶頂期は、生き方そのものが、時代の先端だった。貴重なギターやドラム類、高級スーツに靴のコレクション等。まさに“世紀の伊達(だて)男”と呼ぶにふさわしい姿だった。しかし、21世紀に入ると次第に才能の枯渇を感じ始めるようになり…そして、2009年10月、自ら命を絶った。 番組では、小田和正さん、泉谷しげるさん、高橋幸宏さん、坂崎幸之助さん、木村カエラさんなどのインタビューとともに、音楽だけではなく、生き方そのものに強烈な美学を貫き、そして美学に散った天才音楽家・加藤和彦さんの栄光と挫折そして、素顔に迫ります。案内役は、楽器や洋服など加藤さんの膨大なコレクションに囲まれながら、俳優・高良健吾さんが務めます。 

---引用終了